死神

※フィクションです。


父が自殺したのは、僕が中学に入ってからしばらくしてからのことだった。

昔から仕事が忙しくて、僕ら家族が父と顔を合わせる時間は決して多くはなかった。そして、母はそのような父の悪口を僕ら三人の子供に毎日のように言い聞かせていた。家族を省みない、仕事人間の駄目親父。
姉と妹は、女子にありがちな父親への嫌悪感もあいまって、そうした母の影響をもろにうけた。
どうして、こいつらは、自分を養ってくれてる人間を敬うということをしないのだろう。ものごころついたころから、僕はそのことをずっと疑問に思っていた。家族の中で、僕がいちばん父のことを尊敬していたと思う。
いつも、夜遅く帰ってきては、居場所がなさそうに自室へと入っていく父を、僕は憐れんだ。けれども、幼いころから父を疎遠に感じていた僕は、父をねぎらう言葉を、結局一度もかけられなかった。

ある朝、いちばんに目覚めた僕が、父の部屋に入ると、父は眠るように死んでいた。
とても安らかな寝顔だった。なぜか、僕はそんな彼の顔を見て、安堵した。
ごめん。
おつかれさま。
ありがとう。
今まで一度もいえなかった言葉を、このときはじめて言えた。

いつのまにか母が僕の背後にきていた。異変に気付いたようである。
それからしばらくの間、悲鳴を上げる母や、姉妹が、とても耳障りだった。
なんで、彼女らはいまさらになって泣くのか、不可解だった。
さんざん父を疎んできたくせに、こういうときだけは被害者であろうとする。
彼女らの悲しみが偽りであることは、保険金が入るなり羽振りのよくなった母たちを見れば、火を見るよりも明らかだった。

母に対する疑問が、憎悪に変わったのは、おそらくこのときからであろう。
このときから母のことを、心の中で「寄生虫」と呼び、蔑むようになった。
いや、母だけではない。このとき以来、女性に対しても、漠然とした嫌悪感を抱くようになった。
男を品定めしたり、色目を使う女の姿が、宿主を求める寄生虫のそれに重なるのだ。


続く
2008年02月29日 | Comments(4) | Trackback(0) | 小説のつもり
コメント
お邪魔します。
今回の話はとても共感しました。私の家庭は父(片親)が私達を育ててくれました。とても感謝しています。そんな父にも一つ不満があります。この話の様に私の祖父は仕事ばかりの父親だったみたいです。そんな祖父も82歳なのですが、私の父は祖父を嫌い、悪口、老い先短い祖父に反抗、祖父の人生否定をするのです。この話の姉妹、母的立場の父。その父を思いながら読みました。
まとまりのない、何を言いたいのかわからない文ですが、私が言いたいのは、この話に共感し、続きが楽しみだと言うことです。
チェリーの日記、話はいつも楽しみにしてますこれからも応援してます!
ここに書き込んで良いのか分かりませんでしたが、書いてみました
長文失礼しました。
敬治 URL 2008年02月29日 02:31:15 編集
No title
>>敬治さん
コメントありがとうございます。じつはぼくも、詳しいことは伏せますが、似たようなもどかしさを感じたことがあり、書いてみました。
続き楽しみにしてくださりありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
CHERRY URL 2008年02月29日 15:34:08 編集
No title
某SNSでの日記、お話をいつも楽しみにしてます、一ファン?です。

私もある一定のこうした人たちに対して、嫌悪感を抱いてましたが、最近自分がこうした人たちに近づいている気がして、ドキっとしながら、このお話を読みました。
また続きを楽しみにしてます。
嘉 URL 2008年03月06日 12:42:17 編集
No title
はじめまして、渚です。
いつも更新楽しみにしています。
このお話は、なんだか共感できるお話でした。主人公が抱く嫌悪感が自分とちょっと重なって。
けれどすこし悲しくなって。
意味わかんないコメントですが、すいません。
続きを楽しみにしています。これからもがんばってください。
渚 URL 2008年03月14日 18:33:49 編集

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